パーソナルトレーニングジム「Sharez」を運営している岡崎秀哉です。
フィットネス業界って何となく盛り上がっている感じがするけど、実際どうなの?ってことで数値を用いて分析していこうと思います。
今回のテーマはわかりやすく「RIZAP」。上場企業でもあり、様々なデータが公開されている為、参考にしやすいです。
あくまで個人の見解なので悪しからず。
目次
RIZAPの売上・経費・利益
RIZAPについてネットで調べた限り、こちらが現時点で発表されている最新の内容でした。
参考
RIZAPグループ連結決算ハイライト
RIZAP社はM&Aなども多く行っており、多角経営企業になっているので、ジム単体の事業規模が見えにくくなっています。
上記の記事を参考に、RIZAPジム単体の「売上、経費、利益」を掘り下げてみたいと思います。
RIZAPの売上関連
2017年3月期の決算時には総会員数が7万人を突破。2018年3月期の発表では総会員数10万人を突破したとあります。
つまり、2017年度の新規入会者は約3万人と推測できます。2016年は入会者約2万人とのことなので確実に増えていますね。
また、LTV(ライフタイムバリュー)は2013年の1.7倍になっているとのこと。
2013年はRIZAP立ち上げ当初なので恐らくLTVは高くないと想定し、当時のLTVを約35万円(入会金¥50,000+プログラム料金¥298,000)とします。
2017年には、その1.7倍になっているとのことなので、LTV約35万円×1.7=LTV約60万円。
2017年の新規入会による売上は、LTV約60万円×3万人=約180億。
次に、継続顧客の売上を考えてみます。
記事では、BMPプラン(月額3万円)という1年間の継続プランの申し込みが新規入会者のうち80%であると発表されています。
2016年は入会者2万人。その80%がBMP1年(継続プラン)を申し込んだとすると、
2万人×80%×3万円×12ヶ月=約58億。
その他にも、物販売上、割賦の金利益などがあります。
以前東洋経済の記事にて物販売上は月間3億以上であると記載されてありました。
これを年間約40億円と仮定します。
新規入会者売上、継続会員売上、物販売上と、恐らく多くを占めている売上を合計すると、約300億程度ではないかと思います。
RIZAPの経費関連
次に経費面を見てみましょう。
また別記事にて、広告宣伝費は売上対比で約40%との記載がありましたので、約300億円×40%=約120億円と推測できます。
余談ですが、カウンセリングからの入会率は80%と発表されているので、これだけ投資する価値はあると思います。
2015年の発表の中で、経費それぞれの対売上%を公表していました。
地代家賃5%=15億円、水道光熱費1%=3億円、設備維持費1%=3億円、店舗減価償却費1%=3億円。
合計すると、約25億円。
その他に多くを占めそうなのが人件費。
1000名のトレーナーを社員化という発表もあったので、給与Av400万円とすると、400万円×1000人=40億円。
また、2015年の発表では、人件費は売上に対して約20%である、という数値が出ていたので、約60億円と推測。
トレーナー40億円、その他運営メンバー、幹部メンバー等で約20億円。トータル60億円ということでしょう。
他には物販などの仕入れコスト、採用コスト、研修費、先行投資などあるが、記事によると先行投資が約40億円とあります。
RIZAPの場合、コンパクトな個室空間でのマンツーマンセッションであり、プールやスタジオ、マシンエリアといった余計なスペースはなく、1度に利用する人の数も多くないのでロッカーなども狭くて良いので、通常のフィットネスクラブよりも床面積が狭くて済みます。その為地代家賃は圧倒的に低くなります。
内装はどの店舗もシンプルでパターン化しています。マシンも基本的に同じ物を導入しているので、イニシャルコストも低いです。プールもなく、風呂もなく、床面積も狭いので、光熱費も当然安くなります。
人件費は大きなウエイトを占めそうな気がしますが、1トレーナー当たり15-20名(多いトレーナーは恐らく30名くらい担当しています)は担当可能ですので、比率としてはそれほど高くなりません。
RIZAPの利益関連
諸々含めると、
売上300億円-経費(120億円+25億円+60億円+40億円)=利益50億円ほどと推測できる。
売上300億、利益50億となると、かなりスゴイ。
まさに成功しているとしか言えない数字ではないだろうか。
RIZAPの会員の内訳
RIZAPの会員について非常に参考になるサイトがありましたので、こちらを元にしています。
参考
ライザップ会員の年齢層や男女比は?
上記サイトによると、RIZAPの会員の男女比は、「男性=37%、女性=63%」とのこと。仮にこれを「男性:女性=4:6」としましょう。
RIZAP会員の年齢別の構成比率
また、年齢別の構成比率は、男性が、「10代=1%、20代=20%、30代=28%、40代=23%、50代=17%、60代以上=5%、その他=6%」
(その他って何だ??って感じですが……)
女性の年代別構成比は、「10代=4%、20代=26%、30代=18%、40代=22%、50代=18%、60代以上=7%、その他=5%」
RIZAP会員の年齢別の人数
昨年までの会員数の発表から推測すると、2018年夏時点で恐らく述べ12万人に達していると考えられます。
そして、上記の計算を当てはめると、その男女比は男性=約48,000人、女性=約72,000人であると推測できます。
男性会員の年齢別人数は、「10代=480人、20代=9,600人、30代=13,440人、40代=11,040人、50代=8,160人、60代以上=2,400人、その他=2,880人」
そして、女性会員の年齢別人数は、「10代=2,880人、20代=18,720人、30代=12,960人、40代=15,840人、50代=12,960人、60代以上=5,040人、その他=3,600人」
ということになります。
恐らくRIZAPもこの数値や、それぞれの層のLTVなどを考慮し、広告戦略、新規事業戦略を立てていると思います。
広告宣伝費について
上記でもお伝えしたように、「RIZAPはこれまでおよそ12万人の会員を集めましたが、2017年1年間に関しては推定3万人の新規会員を獲得した」と考えられます。
またこの年の広告宣伝費が推定120億円、広告宣伝費が売上の40%を占めるというのは非常にビジネス界においても攻めた広告宣伝と言えますが、圧倒的な認知を獲得した価値は大きいでしょう。
推定120億円の広告宣伝費で約3万人獲得と仮定すると、1人当たりの獲得単価は約40万円。
これまでのフィットネス業界では、全く想像できない金額です。フィットネスクラブの客単価は月額1万円程度ですから、単純に計算しても4年間継続してもらわないと元が取れないレベルです。
しかし、RIZAPの場合は短期集中型の高額モデルで、上記でも考察しましたが、新規顧客1人当たりのLTVは約60万円。
1人当たり40万円の広告宣伝費を掛けてもプラスに転じる計算になります。それに加えて継続顧客、物販などの売上もあります。
つまり、「これだけの1人当たりのLTVがあるからこそ、これだけ大きな広告宣伝費を投じることができる」ということです。
まとめ
改めて見てみると、とてつもないビジネスモデルであることがわかります。
圧倒的なコストを広告に投じ、圧倒的な客単価を生み出す。と同時に圧倒的な地名度、イメージも獲得しました。
フィットネス業界からすると、トレーナーという職業が以前に比べて認知されましたし、将来の職業の選択肢の一つと考える人も増えました。もちろん、パーソナルトレーニングサービス自体も認知され、評価を得られるようになりました。
様々な観点から見てもとてつもない企業であることがわかります。
ただ、個人的に感じている課題としては、コンプレックスビジネスとして認識されている点です。
どういうことかというと、「ブランド認知はされているが、ブランド価値があまり上がっていないのでは?」という懸念です。
街中でRIZAPのロゴの入った袋を持って歩いている人などを見かけたことはありません。インスタ等でもRIZAPでのトレーニングの様子などは思いの外アップされていません。
恐らく「通っていることを自慢したい」という人がまだ多くないのだと思います。これはコンプレックスビジネス特有の、「通っている=ダイエットに必死、お金を掛けている」というイメージがついてしまう為だと推測しています。
「このブランドイメージをどう変えていくか?」は今後の多角展開において大きなポイントだと思います。
最近は、スポーツ分野への進出、暗闇系エクササイズプログラム、ヨガ、女性専用フィットネスなど手は既に出していますので、ブランドイメージ改善がこれからの見モノではないかと思っています。