パーソナルトレーニングジム「Sharez」代表の岡崎秀哉です。
2024年7月より、富士見市立市民総合体育館の自主事業としてスタートした「貯筋体操プログラム」の講師を担当しています。
今回は、ここまでの数ヶ月間実施した「貯筋体操プログラム」の内容や、貯筋体操プログラムの成果を紹介したいと思います。
「貯筋体操プログラム」スタート時の記事はこちら↓
「貯筋体操プログラム」をSharezで担当しています【埼玉県富士見市立市民総合体育】
目次
貯筋体操プログラムとは?
埼玉県富士見市立市民総合体育館では、「ジムやアリーナ、柔道場、剣道場」などの施設を利用できるだけでなく、様々なレッスンが開催されています。
そのレッスンの新たな取り組みとして、2024年7月に中高年の方々向けのプログラム「貯筋体操プログラム」が導入され、その講師を私(岡崎)が務めることになりました。
貯筋体操プログラムとは、運動生理学やバイオメカニクスの権威である鹿屋体育大学名誉教授の「福永哲夫氏」が開発・推進している「貯筋体操プロジェクト」が元になっており、日常的に実施できる筋力トレーニングを継続して行うことで、年を重ねても筋肉量や運動機能を維持し、QOL(クオリティオブライフ=生活の質)を保っていこうという取り組みです。
参考
貯筋運動プロジェクト健康・体力づくり事業財団
そこで、富士見市立市民総合体育館の「貯筋体操プログラム」も、「どなたでも参加できる」「どなたでも実施できる」「どなたでも継続できる」をテーマにプログラムを組んでいます。
3ヶ月間を1つの区切りとし、1回60分間の内容を3ヶ月で10回開催する形(およそ週1回)になっています。
これまで、「2024年7月〜9月末までの期間」、「2024年10月〜12月末までの期間」、「2025年1月〜3月末までの期間」の3クール開催してきており、2025年度の継続も決定しています。
参加者は男女いらっしゃいますが、比較的女性が多めで、年代は40代〜70代の方までいらっしゃいます。
貯筋体操プログラムにて体力測定の実施
貯筋体操プログラムは全10回の開催で、第1回はオリエンテーション的な位置付けにしています。
オリエンテーションで、「どんな趣旨のプログラムなのか、どんな流れで実施するか、どんな成果が見込めるか」などを資料を使いながら、参加者の方々に説明しています。
また、第1回で参加者の方々の「体力測定」も実施しています。
最終回の10回目にも同じ「体力測定」することで、プログラムに参加した成果を可視化することができます。
体力測定の内容
体力測定の実施種目としては、「ツーステップテスト」「立ち上がりテスト」「長座体前屈」「上体起こし」「閉眼片足立ち」の5種目としました。
また、それぞれの種目の結果を測定するだけでなく、「5段階に点数化」することで、参加者の方にわかりやすく伝えられるようにしました。
- ツーステップテスト:直立姿勢から大股で2歩進み、どれくらいの距離を進めるか測定し、その距離(cm)を身長の数値(cm)で割ることで、「2ステップ値」を算出します。この種目では「下半身の可動性や筋力」の評価ができます。
- 立ち上がりテスト:直立姿勢から、しゃがんでイスにお尻がついたら立ち上がります。この動作を30秒間に何回できるか測定します。この種目では「下半身の筋力や筋持久力」の評価ができます。
- 長座体前屈:背中を壁につけた状態で長座の姿勢になり、手を前に伸ばしながら前屈します。スタート位置から手がどれだけ前に伸ばせたか、その距離を測定します。この種目では「下半身や体幹部の柔軟性」の評価ができます。
- 上体起こし:上体起こしは参加者がペアになり、実施者と支持者に分かれます。実施者は仰向けになり、膝を立て支持者が実施者の脚を押さえ、固定します。実施者は背中を丸め、上体を上まで起こし、これを30秒間で何回できるか測定します。この種目では「体幹部の筋力」の評価ができます。
- 閉眼片足立ち:<目を閉じた状態で片足立ちし、バランスを崩さず何秒間キープできるかを測定します。この種目では「バランス機能」の評価ができます。
体力測定では、これらの種目の測定を行い、点数をつけることで、参加者の方の体力レベルを可視化していきました。
「何となく運動不足である、体力が落ちている」といったイメージではなく、具体的に「どんな機能が低下しているのか、どれくらい低下しているのか」を把握することで、その後に「どういったことを実施した方が良いのか」を検討できるようにしました。
こうすることで、効率よく機能改善、体力向上に取り組めると考えています。
貯筋体操プログラムのエクササイズ内容
貯筋体操プログラムのエクササイズ内容は、上記の「体力測定」の結果や、参加者の様子、以下のテーマを意識して、構成を検討していきます。
- 楽しく継続できること
- 根拠のあるプログラムであること
- 自宅などでも実施できるものであること
お一人で行うエクササイズがほとんどですが、ペアで行うエクササイズや、道具(体育館で用意したもの)を使うエクササイズも取り入れながら、参加者同士のコミュニケーションも大切にしつつ、楽しみながら継続できる工夫を凝らしています。
使うものは、「マット、ゴムボール、テニスボール」といったアイテムで、全て体育館にあるものを使っているので、参加者の方は何も持ってこなくても大丈夫です。
また、ご自宅でも行えるように、手軽に安価に購入できるアイテムを使っているので、取り入れやすいと思います。
貯筋体操プログラムの実際の60分間の流れ
60分間の具体的な流れについて説明します。
ウォーミングアップ
最初は軽い準備体操を行い、その後ウォーミングアップとして、「部位別の動的ストレッチ、移動しながらの運動」を実施しています。
ウォーミングアップの目的としては、「身体のコンディションを調整し良い動きができるようにする、ケガを予防する」という2点に配慮しています。
静的ストレッチを行うだけでは、心拍数が上がらなかったり、筋出力のコンディショニングとして不十分だったりします。
動的ストレッチを導入することで、筋繊維だけでなく、腱や関節のコンディショニングもできるようにし、筋繊維に対しても静的ストレッチよりも伸張性の負荷をかけていきます。
また、移動しながらの運動をすることで、心拍数を上げ、血流を良くし、筋肉や関節のコンディションを高め、交感神経を優位にしていきます。
エクササイズ
ウォーミングアップ後は、以下の流れでエクササイズを行います。
- 「関節の可動性、安定性」を高めるエクササイズ
- 正しい動きを獲得するためのエクササイズ(動きづくり)
- 筋力トレーニングや複合的なエクササイズ
筋肉は何もしないと加齢とともに低下してしまいます。
これは、以下などが要因とされており、年齢とともに筋肉量が低下することを「サルコペニア」と呼んでいます。
- 活動量の低下によるもの
- 筋肉の合成を促すホルモンの分泌量の低下によるもの
- 生活習慣の乱れの積み重ね
サルコペニアに関する研究において、特に下半身の筋肉量が年齢とともに低下しやすいことが確認されています。
参考
日本人筋肉量の加齢による特徴日老医誌
そのため、筋力トレーニングにおいては、主に下半身を中心としたメニューで構成しています。
また、加齢により低下する機能として、バランス機能もあげられます。
参考
加齢に伴う運動機能の低下シリーズ「加齢に伴う生体の変化とその理解」
バランス機能が低下すると、転倒リスクが上がってしまったり、それにより骨折のリスクも高まってしまいます。
さらに、運動機能全体の低下にも繋がるので、活動量の低下を招く可能性があります。
これは、バランスを司る前庭覚や足関節、足部の筋力低下、視力の低下などが要因とされています。
よって、バランス機能を高めるエクササイズも後半に行い、バランス機能に必要な「視覚、前庭覚、体性感覚(筋肉の動きや関節の動きを把握する感覚)」を高める感覚統合エクササイズ、というものも取り入れています。
貯筋体操プログラムの成果
最後に、貯筋体操プログラムの取り組みの成果を紹介します。
上のグラフは、2024年10月〜2024年12月に実施した貯筋体操プログラムの「第1回と第10回の体力測定の結果」を比較したものです。
※参加者は8名(男性1名、女性7名)で、年代は40代〜70代の方々のデータです。
2ステップテストについては、大きな改善は見られませんでしたが、そのほかの項目は良い数値へと改善が見られ、特にバランス機能の指標である閉眼片足立ちについては、大きな改善が見られたことがわかります。
このバランス機能の改善により、プログラム内で実施する片足でのエクササイズや移動を伴うエクササイズで、皆さんの動きが安定してきていると実感します。
この結果から、貯筋体操プログラムを継続して受けていただくことで、「柔軟性(可動性)、筋力、バランス機能」などが向上し、日常生活が楽になったり、身体を動かしやすくするための機能が向上し、活動量を増やすことに寄与するのではないかと考えられます。
まとめ
中高年の方々向けの運動プログラムは数多くあると思いますが、成果を測定して可視化したり、体力測定の結果を元に論理的にプログラムを構成してアプローチしている教室は少ないのではないかと思います。
富士見市立市民総合体育館の貯筋体操プログラムでは、最初の期間(2024年7月〜9月)は3名でしたが、第2クール(2024年10月〜12月)は8名、第3クール(2025年1月〜3月)は14名と、参加者が徐々に増えてきています。
どなたでも気軽に参加できて、体力レベルに合わせた動きもお伝えしているので、安心して受けていただけると思います。
貯筋体操プログラムにご興味ある方は、ぜひ一度見学にきていただいたり、以下のお問い合わせフォームから、お気軽にご連絡ください。