パーソナルトレーニングジム「Shibuya Fitness Sharez」トレーナーの鈴木大也です。
私の母校である杉並区某中学校の陸上部の選手に、「スポーツをする上で大切な栄養」についてお伝えするセミナーを、2024年7月27日に開催しました。
本記事では、セミナーの内容を紹介したいと思います。
目次
スポーツ栄養セミナー開催の経緯
私自身、中学生〜大学までの約7年間、陸上競技を行っている中で、以下の点がいまいち理解できていませんでした。
- 練習や試合前に何を食べて良いか?
- 食事がどのように身体に影響を及ぼすか?
そこで、これまでトレーナーとして活動する中で学んだ栄養に関する知識を提供し、「今よりも良いパフォーマンスで走れるように、そして少しでもこれからの陸上生活を楽しんでほしい」という想いから、陸上部のみなさんにお話しする機会をいただきました。
今回は、学生と保護者の方あわせて14名ほど、ご参加いただきました。
スポーツをする上で「栄養」は大切な要素
まずはスポーツにおいて、「運動」、「休養」、「栄養」の3点が大切な要素であることをお伝えしました。
全部がバランスよく達成できている状態が好ましく、どれか一つでもかけてしまうとスポーツのパフォーマンスが上がりにくかったり、不調の原因になりかねません。
栄養の過不足による影響
上記の3点の中でも、学生の方々があまり情報を得る機会がない「栄養」について、「栄養がしっかり摂れていると何が良いのか?(メリット)」と「栄養が不足していると何が悪いのか?(デメリット)」などの具体例をお伝えしながら、重要性を説明しました。
栄養がしっかり摂れていると何が良いのか?(メリット)
- 身体の強化につながる
- 身体の強化につながる
- 体が回復しやすい
- 練習でバテにくい
栄養が不足していると何が悪いのか?(デメリット)
- 怪我しやすい
- 貧血になりやすい
- 筋肉量が減る
- 疲れが取れにくい
栄養摂取がパフォーマンスにどう影響しているかの研究データの紹介
さらに、栄養摂取がパフォーマンスにどう影響しているかの研究データを2つ紹介しました。
研究データ1:ごはん(糖質)の摂取量によるパフォーマンスの影響
1つ目は、「ご飯を食べたグループ」と「ご飯を食べなかったグループ」で疲労困憊まで走ってもらい、どれくらい走力に影響が出るのかを調べた研究です。
結果は以下の違いがあり、ご飯を食べたグループは、ご飯を食べなかったグループに比べて、30秒も長く走り続けることができました。
- ご飯を食べたグループ:5分52秒
- ご飯を食べなかったグループ:5分22秒
ご飯に含まれる糖質は、筋肉や肝臓で身体を動かすエネルギー源として貯蔵され、長時間の運動で主に消費されます。
そのため、ご飯を食べなかったグループは、エネルギー源が枯渇したためこのような結果になったと思われます。
参考 運動前の炭水化物摂取による持久力パフォーマンスの向上と関連のある因子は?スポーツ栄養Web研究データ2:タンパク質の摂取量による筋肉増加の影響
2つ目は、タンパク質をいつもの食事に少しプラスするだけで筋肉量が増えるのかどうかを調べた研究の紹介です。
1日65gのタンパク質摂取している方に、1日70gのタンパク質摂取に変えてもらったところ、2,3ヶ月で平均390gの筋肉量が増加したという結果です。
筋肉を増やすには血中のアミノ酸濃度が高い必要があり、今回たんぱく質量を多く摂取したため、筋肉が合成しやすい状態なっていたことが結果につながったと見られます。
参考 Dose–response relationship between protein intake and muscle mass increaseNutrition Reviews|Oxford University Press栄養を考える上で必要な3要素
続いて、栄養を考える上で必要な以下の3要素について、それぞれのポイントをお伝えしました。
- 5大栄養素
- 摂取カロリーと栄養バランス
- 食事の選択とタイミング
①5大栄養素
栄養を知っていく上で、「5大栄養素が、それぞれ身体に対してどのような働きをするのか」を説明しました。
- 糖質:筋肉や脳の働き助けるエネルギー源
- たんぱく質:筋肉、臓器、皮膚、毛髪などの成分を作る働き
- 脂質:長時間の運動において効率良く利用できるエネルギー源。皮下脂肪として臓器を守ったり、体温を保持する働きもある。
- ビタミン:効率よくエネルギーを産生したり疲労物質を除去する働きがある
- ミネラル:ビタミンと同様に、効率よくエネルギーを産生したり疲労物質を除去する働きがある
②摂取カロリーと栄養バランス
摂取カロリー
次に、「どのくらいのカロリーを取れば良いのか、そしてどのようなバランスで食事をすれば良いのか」という、摂取カロリーと栄養バランスについて考えていきました。
中学生は身体の成長段階にあるため、普段生活するための食事量に加えて、身体を成長するためのエネルギーをより多く取ることが大事です。
また、スポーツをしている場合、エネルギーの消費量が多くなるので、普段の生活に必要なエネルギー量よりも、より多くのエネルギー摂取が必要となります。
栄養バランス
ここで重要なのは、「ただ闇雲に食事を摂取しても、走りや身体の成長に繋がりにくい」ということです。
摂取するエネルギーは、PFCバランス(栄養バランス)を考えて、食事をしていくことが重要になります。(PFCとは、「Protein=たんぱく質、Fat=脂質、Carbohydrates=糖質」のそれぞれの頭文字をとった略語です)
例えば、陸上などの場合は、PFCバランスを「タンパク質:脂質:炭水化物=2:2:6」の割合するのがおすすめです。
炭水化物の割合を多くすることで、走るのに必要な糖質を確保し、バテないようにするためです
③食事の選択とタイミング
最後に、「どのような食事を選べばいいのか、そしてどのタイミングで食事を摂れば良いのか」という、食事の選択とタイミングについてお伝えしました。
食事の選択
まず「選ぶと良い食事」として、以下をおすすめしています。
- タンパク質が多く脂質が低い食事(魚、鶏肉、卵、ヨーグルト)
- 吸収が早く油が多くない糖質(うどん、ご飯、和風パスタ、バナナ)
身体を作るためには、多くのタンパク質が必要になり、走るためには、糖質が重要となってきます。
また、カロリーコントロールがしやすい脂質が低いものを選ぶと良いです。
次に「選ばない方が良いもの」として、以下をお伝えしました。
- 油が多く手軽にたくさん食べれてしまう食事(唐揚げ、スナック菓子、フライドポテト、天ぷら)
- 一食でかなり満足感がある食事(クリーミーなパスタ、ピザ、ハンバーグ、ケーキ)
食事のタイミング
食事のタイミングについては、運動前と運動後の食べる量と摂取までの時間をお伝えしました。
まず「運動前の補食」としては、「おにぎりやバナナ、スポーツゼリー」など、素早く吸収される糖質を選ぶことをおすすめしました。
これは、走るためのエネルギー源である糖質を素早く十分に身体に蓄えておくためです。
中学生の場合、お昼から練習まで3〜4時間ほど時間が空くと思いますので、摂取することをおすすめしています。
そして「運動後の補食」ですが、運動前と同じように「おにぎりやバナナ、スポーツゼリー」などの素早く吸収される糖質を摂り、プラスで「タンパク質も摂取すること」をおすすめしました。
これは、「糖質とタンパク質を同時に摂取した方が、糖質単体で摂るより疲労回復や筋肉の修復が早かった」という研究結果があるためです。
練習後15分〜45分以内に摂取すると、吸収率も良いのでおすすめです。
まとめ
今回、中学陸上部の方々に、スポーツをする上で栄養の重要性をお話しさせていただきました。
学生のみなさんの反応や先生方のお話の中で、十分に栄養が摂れていない方が多かった印象があります。
食事の変化により、「身体の成長やパフォーマンスが上がること」に繋がっていきますので、ぜひ今回の内容を少しでも実施していただき、栄養の重要性を実感していただけたらと思っています。
今後も、ジュニアアスリートや学生アスリートはもちろんですが、保護者の方々にもお伝えする機会を増やしていきたいと考えています。
エリアや競技を問わず、スポーツに携わる多くの方に、専門的な技術や知識を提供し、よりスポーツを楽しんでいただきたいと思っております。
今回のような栄養セミナーや、フィジカル強化セミナーなどに関心のある指導者の方、学生さんなどいらっしゃいましたら、「お問い合わせフォーム」よりご相談ください。