今回は、どのヨガでも必ず何かしらの形で組み込まれる「太陽礼拝」について解説します。
これを知っていれば、どんなヨガに参加しても、「あっ、これは太陽礼拝のこの流れを使っているんだな」と気付くことができ、次の動きへの流れやそのインストラクターがポイントとしているアーサナ(ポーズ)が何なのかを見極めることができます。
もしかしたらあなたもインストラクターへの道が開くかも?
目次
太陽礼拝とは?
ではまずヨガっぽく、太陽礼拝とは何か、その歴史について少し触れていきます。
太陽礼拝はサンスクリット語で「スーリヤナマスカーラ」、英語では“サンサルテーション”と言われ、1910年頃に構成されたと考えられています。
一般向けの健康増進を目的としたラジオ体操のようなものからはじまり、現在のような体系になったのは、ここ100年ほどのようです。
原型を考案したのは、西インドのアウンド藩王国(当時)の藩王。
この藩王国の王子アッパ・パントは、4歳の時(1916年)に父王より太陽礼拝を教えられ、後に本も著し、イギリス植民地からのインド独立後も、外交官として活躍しながら太陽礼拝の普及にも尽力しました。
アッパ・パントは、著書の中でこう語っています。
スーリヤナマスカーラを意識的に、正しく行うことができれば、体のエネルギーの中心を活性化することができる。
(中略)
あなたは創造の調和や喜び、そして美しさを感じることができるだろう。「I(自我)」と、「NO, I(他人)」という相違から生まれてくる混乱や衝突は打ち消され、純粋な愛、思いやり、慈悲の気持ちが内側に芽生えてくる。スーリナマスカーラは、この「ONENESS(自他の融合、ひとつであること)」への意識へとあなたを導くだろう。
精神と身体の融合、自他の融合、これもヨガをやっていると自然と感じ、身に付いてくるものだと私は感じます。
太陽礼拝は常に同じアーサナ(ポーズ)を一定のシークエンス(流れ)の中で行います。
そのため、自分の精神と体がどんな状態なのかを敏感に感じ取ることができ、初心者・上級者問わず太陽礼拝を行うことに意味があり、だからこそヨガの基礎として用いられているのだと思います。
太陽礼拝を行うことで得られる効果とは?
太陽礼拝のアーサナ(ポーズ)とシークエンス(流れ)を繰り返すことで得られる効果としては、以下の3つが挙げられています。
- 新たな気付きが得られる
- 雑念・ネガティブなマインドのリセット
- 身体的・精神的柔軟性の向上
新たな気付きが得られる
日々のストレスの多くは、人間関係や仕事の重圧などが原因になっていると思います。
太陽礼拝は決まった流れがあり、毎日その流れを繰り返すことによって深みが増していく感覚と、同じことをしても毎日異なった感覚を感じ取ることができます。
これは少し前話題になったラグビーの五郎丸選手が行っていたルーティンと共通すると感じています。
何か物事に対して余計なエネルギーを注がなくても自然に落ち着いた状態で動ける、対応できるようになります。
さらに慣れてきたら、自身の心の状態も感じられるようになるので、人と関わった時に、無理をせず落ち着いて調整自分を見つけることができると思います。
雑念・ネガティブなマインドのリセット
決まった流れを次から次へと呼吸と連動させながら動く。
現代ではこのように気付けば自然と集中し、心が静かになる時間を持つこと自体が珍しいと思います。
常にストレスにさらされている生活の中で、5分でも10分でも目の前のことに集中する、これこそが雑念やネガティブなマインドをリセットできる要因です。
身体的・精神的柔軟性の向上
このように、精神的な柔軟性だけでなく、ヨガの効果のひとつである身体の柔軟性ももちろん期待できます。
アーサナ(ポーズ)は、間違った筋肉を使って余計な力を入れてしまうと、呼吸が筋肉によってブロックされて、深く呼吸ができません。
ただ、何度も繰り返し行うことで、呼吸もゆったりできるようになり、今まで力が入っていた部分からいい意味で力が抜け、身体の柔軟性向上につながります。
それを繰り返し同じ動きの中で追及していくことにより、身体の効率良い使い方も身に付けることができます。
太陽礼拝を108回行うイベントがある?
ちなみに、年末年始には太陽礼拝を108回行うイベントがよく開催されます。
一年の終わりや始まりに太陽礼拝を行うことで、心身ともにリセットするということです。
人間には108つの煩悩があると言われています。この煩悩によって心身が乱され、自分探求のための知恵を妨げられているのです。
除夜の鐘を108回打つように、太陽礼拝にも「1つの礼拝ごとに煩悩を1つずつ浄化していく」という意味があります。
1日の始まりや年末年始、そして年度の切替時などに、このように意識しながら太陽礼拝を行うと、次へと向かう推進力を生む、そんな効果を実感しています。
太陽礼拝のアーサナ(ポーズ)と順序
では太陽礼拝を実際にやってみましょう。
太陽礼拝はAとBの二つがあり、ここではオーソドックスな太陽礼拝Aをご紹介します。
また、ヨガ流派により違いはあるのですが一番ポピュラーなシークエンスを取り上げます。
太陽礼拝Aに出てくるポーズ
太陽礼拝は全部で12のポーズをとりますが、出てくるヨガポーズは以下の8つです。
- ターダーサナ
- ウルドヴァハスタアーサナ
- ウッターナーサナ
- アルダ・ウッターナーサナ
- クンバカアーサナ
- チャトランガ・ダンダーサナ
- ヴァムカシュヴァーナーサナ
- アドームカシュヴァーナーサナ
太陽礼拝のシークエンス
太陽礼拝1回は、以下のStep1〜Step12のポーズを行います。
Step1:ターダーサナ
頭上から一本の糸で引っ張られているようなイメージでまっすぐ背筋を伸ばして立ちます。
Step2:ウルドヴァハスタアーサナ
息を吸いながら両手を空に上げます。
Step3:ウッターナーサナ
息を吐きながら前屈し、手の平を床に着き、指先は足先と同じラインに揃えます。
Step4:アルダ・ウッターナーサナ
息を吸って指先を立て、今度は膝を伸ばして上体を半分上げ、目線はやや前方に。
Step5:クンバカアーサナ
息を吐きながら手の平を床に着き、吸いながら足を後方へ伸ばします。
Step6:チャトランガ・ダンダーサナ
体一直線のまま息を吐きながら肘を曲げ、お腹は引き締めたまま目線は大地の方へ向けます。
Step7:ヴァムカシュヴァーナーサナ
息を吸いながら上体を前方へスライドさせ、足の甲を床につけて肘を伸ばし目線は斜め上へ。
Step8:アドームカシュヴァーナーサナ
つま先を立てて、息を吐きながらゆっくりとお尻を空高く突き出します。
Step9:アルダ・ウッターナーサナ
目線を手と手の間に向け、そこをめがけて足を片方ずつ戻し、息を吸って膝を伸ばして上半身を軽く上げ、指先は大地につけたまま、目線はやや前方へ。
Step10:ウッターナーサナ
息を吐きながら手の平を大地につけ、胸と腿をつけて深い前屈です。
Step11:ウルドヴァハスタアーサナ
息を吸いながら上体を起こし、両手を空に上げます。
Step12:ターダーサナ
息を吐きながら両手を胸の前で合掌します。
まとめ
始めたばかりでは、順序を覚えるのが精一杯かもしれませんが、繰り返していくことで徐々に意識を自分の内側へ持っていけると思います。
冒頭でお話ししたように、太陽礼拝は基本でありながら、とても奥深いものです。
太陽礼拝を習慣とすることで、時には自分の変化を察知したり、年末年始に行うことで自分をリセットするなど、様々な場面でやってみましょう。