パーソナルトレーニングジム「Sharez高山店」トレーナーの桂川晃尚です。
岐阜県高山市立日枝中学校バドミントン部の顧問である「槇本賢司」先生からお話をいただき、中学生選手向けの「バドミントンに必要なウォームアップメニューとフットワークメニュー」をお伝えするセミナーを開催しました。
セミナー会場は「高山市立国府小学校」の体育館をお借りしました。
目次
バドミントン選手向けのパフォーマンス向上セミナー開催の経緯
槇本先生は、私の1学年上の先輩にあたり、小学生時代には同じドッジボールチームに所属しておりました。
現在のチームの課題として、「練習内容がマンネリ化している」、「普段からできるウォームアップなどを知りたい」とのお話をいただき、今回のセミナー内容の「バドミントン競技におけるパフォーマンス向上」について、お伝えする機会をいただきました。
バドミントン選手向けのパフォーマンス向上セミナーの内容
今回のセミナーの内容はこちらです。
- パフォーマンスピラミッドの考え方
- バドミントンの動きに合わせたウォームアップ
- バドミントンの動きに合わせたフットワークドリル
今回のセミナーは、日枝中学校バドミントン部の30名ほどに参加いただきました。
参加者全員に資料を配布し、セミナー中にメモを取っていただき、その後の日々の練習で活かせる様にしました。
セミナーの各内容の詳細について、以下で紹介していきます。
①パフォーマンスピラミッドの考え方
競技のパフォーマンス力を上げるためは、上図のパフォーマンスピラミッドを用いて説明することができます。
パフォーマンスピラミッドとは、「スキル・パフォーマンス・ムーブメント」の3つの段階に分けて、パフォーマンスアップを向上していく考え方です。
- スキル: スキルは「投げる」「打つ」「捕る」「走る」などの能力を意味します。バドミントンでいえば、「スマッシュ」や「ドライブ」などにあたります。
- パフォーマンス: パフォーマンスは「アジリティ」「敏捷性」「パワー」「筋力」「持久力」を意味し、フィジカル能力の高さを表します。いくらスキルがあっても、筋力やスピードが無ければ、パフォーマンスアップは難しくなります。
- ムーブメント: ムーブメントは「動き」「動作」を意味します。一つ一つの動きを、身体に負担なく、「正しく動かせる」ことが重要ということです。
パフォーマンスピラミッドの土台を構築する
多くの方は「スキル」や「パフォーマンス」の部分に目が行きがちで、練習ではそこに時間を費やしてしまいます。
競技レベルの高い選手は、土台がしっかりしているからこそ、スキルやパフォーマンスを大きくすることができ、全体的に大きいパフォーマンスピラミッドができます。(上図左)
しかし、土台となる「ムーブメント」が備わっていなければ、小さな土台の上で技術を磨こうとしているので、小さいピラミッドとなってしまいます。(上図右)
また、土台がしっかりしていないため、関節に大きな負担がかかったり、思うようなパフォーマンスが引き出せず、怪我や不調へと繋がります。
「競技に必要な正しい動きを習得することが、パフォーマンスアップに繋がる近道となる」という考え方です。
※「ウォームアップ」も、正しい動きにもっていくための1つの要素です。
②バドミントンの動きに合わせたウォームアップ
ウォームアップは、パフォーマンスピラミッドの「ムーブメント」を向上する要素の1つです。
ランニングなどで身体を温めるだけではなく、バドミントンの動きに合わせて、ウォームアップしていく必要があります。
- スポーツを行う前に最適な心身状態を作り出す。
- 練習や試合時の活動レベルを上げて、傷害を防ぐ。
- 神経反応や連動性、筋肉の収縮性を高める。
バドミントンの主な動き
バドミントンは、フォアとバックからの「オーバーヘッド」「サイドハンド」「アンダーハンド」の動きから、下半身と合わせて、上半身も多くの筋肉を活動させます。
そのため、ランニングなどの下半身のウォームアップだけでは不十分となり、怪我のリスクを高めてしまいます。
ウォームアップの解説と実践
普段実施しているウォームアップが以下の内容で、下半身に焦点をおいたメニューがほとんどでした。
- ランニング
- ダッシュ
- ランジツイスト
- 股関節回し
- 臀筋ストレッチ
- 大腿四頭筋ストレッチ
- クロスステップ
- サイドステップ
そこで、上半身もウォームアップできる内容を加えた種目を、実際に動きながら紹介しました。効果と合わせて、以下をご確認ください。
- ランニング: 心拍数を上げて交感神経を優位にする、腕振りや足上げなどに関わる筋肉への神経伝達スピードを高める
- 首ストレッチ: バドミントンは、ロブやスマッシュ時など、シャトルが頭上に上がる場面が多くあるため)
- 肩甲骨、肩ストレッチ: バドミントンは、オーバーヘッド、サイドハンド、アンダーハンドの動作があり、肩甲骨や肩関節の可動域が求められるため)
- 腕ストレッチ: スマッシュの威力を上げたりする上で、上腕三頭筋などの動きが重要となるため)
- 手首ストレッチ: ラケットの角度や打球の軌道を作る上で、手首の柔軟性が必要となるため)
- 股関節ストレッチ: 瞬時の方向転換や低い姿勢の維持、跳躍時の伸展動作が必要なため)
- ランジストレッチ: ネット際のシャトルに反応し、前に足が出るようにするため)
- 大腿四頭筋ストレッチ: 骨盤を前傾させる筋肉で、硬くなると反り腰が強くなり、腰痛などに繋がるため)
- もも裏ストレッチ: 骨盤を後傾させる筋肉で、硬くなると股関節の動きが鈍くなり、低い姿勢をとる際などに腰の負担も大きくなるため)
- 臀筋ストレッチ: ダッシュやジャンプなどの、足を後ろに蹴り出したり踏み込む際に使われる筋肉で、硬くなると骨盤が後傾しやすくなり、腰痛の原因にもなるため)
- ふくらはぎストレッチ: 硬さがあると、足爪先を上げづらくなり、低い姿勢などをとる際に膝へ負担が来やすいため)
- 足首ストレッチ: 硬さがあると、足を一歩踏み出した時やジャンプの着地時に、足裏側が内に入り、捻挫を起こしやすいため)
③バドミントンの動きに合わせたフットワークドリル
フットワークドリルに関しても、バドミントンの動きに合わせて実施することが重要です。
今回は、普段行っている「指示だしフットワーク」を要素を分解して、それぞれの内容のポイントをお伝えしていきました。
フットワークドリルの内容とポイント
スプリント
- 後ろ重心にならないようにダッシュする
- 切り返し時は片足で踏み込む
- 切り返し時の体重移動をスムーズに行う
切り返し時に、体重が進行方向へ流れてしまう選手も多かったですが、意識してもらうことで体重移動がスムーズにできるようになりました。
前後ダッシュ
- 進行方向に重心を乗せる
- 目線を落とさないように進む
- 切り返し時の踏み込みの重心が流れないようにする
バック走のときに、なかなか進行方向に重心が乗せられない選手が多かったように見えました。
バックバウンディングやシザーズ系の動きを取り入れることで、重心移動や可動域が向上していくと感じました。
前後ジャンプ
- 目線を落とさないようにする
- 頭の位置がズレない
- 股関節より下で前後に動く
- 地面に接地している時間を短くする
背中が丸まってしまい、体幹維持ができない選手もいたため、筋肉の緊張をほぐすメニューやドローインなども追加すると良いと感じました。
左右ジャンプ
- 目線を落とさないようにする
- 頭の位置がズレない
- 股関節より下で左右に動く
- 地面に接地している時間を短くする
この種目も、高くジャンプせず、足が地面についたら素早く左右に移動してもらうことを意識しました。
前後よりもうまくできる選手が多く、着地時の安定性向上や体幹強化などに繋がります。
ジャックナイフ
- 目線を落とさないようにする
- 腿を引き上げる
- 地面の接地時間を短くする
高さを出した連続の腿上げジャンプになるため、床を強く蹴る力や空中バランスなどの能力が必要となります。
ジャンプした際に、膝の屈曲だけで跳ぼうとして、踵がお尻に近くなる選手がいたため、スキップやニータッグ系などの腿を引き上げる種目も必要であると感じました。
ツーステップ
- 動きの切り返し時は、2回踏みを行う
- 目線を落とさないようにする
ネット側にきた球を、取りに行く際などに必要な動きになり、普段の練習でも近い動きを取り入れていることから、うまくできる選手がほとんどでした。
クロスステップ
- 上半身と下半身の捻りを作る
- 目線を落とさないようにする
- 足だけの動きにならないようにする
バドミントンは、フォア奥やサイド打ちの際に、クロスする動きが入ります。
クロスの動きができないと、球に届かなかったり、バランスを崩して怪我の原因になります。
サイドステップ
- 切り返し時は進行方向へ体重を移動させる
- 移動時に姿勢を上下させない
- 目線を落とさないようにする
バドミントンは、前後だけでなく、左右への素早い移動も必要とされます。
切り返し時に、踏み込み足で蹴れず、体幹が流れてしまっている選手がいたため、片足でのバランス種目も追加で必要であると感じました。
まとめ
コロナ禍では、「限られた時間と環境の中で、競技のパフォーマンスを上げるには、何をしたら良いのかわからない……」という悩みを持ったチームも多く存在すると感じています。
コロナの影響で3年ほど地元への貢献活動が進められませんでしたが、久しぶりに高山でセミナーを開催できたことを嬉しく思います。
今回のセミナー開催にあたり、ご協力いただきました皆様に、この場をお借りし感謝申し上げます。
Sharezでは、今後も積極的にスポーツ指導分野にも力を入れていきたいと考えております。
エリアや競技を問わず、スポーツに携わる多くの方に、専門的な技術や知識を提供し、よりスポーツを楽しんでいただきたいと思っております。
「部活動やスポーツチームでセミナーを実施して欲しい」というご要望がございましたら、「お問い合わせフォーム」よりお気軽にお申し付けください!