トレーニングの頻度を決めるときに、「運動・トレーニング経験が少ない人は頻度が多く、逆に経験豊富な人は頻度は少なくても良いの?」と考えられている方もいらっしゃいますが、そういうわけではありません。
人が1つの動作をを覚える過程を紹介しながら、運動・トレーニング経験を考慮したベストな頻度の考え方を説明していきます。
目次
運動・トレーニングの動作は脳で覚える
人が1つの動作を覚えるまでには、3つの段階が存在します。
モーターコントロール(運動制御)
1つの動作を行う時に、どこの筋肉を働かせて、どこの関節を動かすのかというのを感じ取って気づく(知る)段階です。
小さい時に自転車に乗る練習を始める時の最初のステップは、2輪の不安定な状態を自分1人でバランスを取ることができないので、後ろから誰かに支えられながら練習していきますよね。(もしくは補助輪をつける)
この練習を繰り返していく内に、少しづつ2輪の不安定な状況の中で、どういう身体の使い方をしたらバランスが保てるかに気づいてきます。
この段階がバランスの取り方(筋肉の働かせ方)に気づいた状態なので、「モーターコントロール(運動制御)」の段階です。
モーターラーニング(運動学習)
モーターコントロールの段階で気づいた筋肉や関節のコントロールを、無意識でも行える様に繰り返し反復していく段階です。
1度気づいた身体の使い方は、直ぐには身体になじみません。昨日は10mは1人で乗れたけど、今日は5mでバランスを崩して足をついてしまう。
そんな状況を繰り返して練習を継続していくのが、「モーターラーニング(運動学習)」の段階です。
モーターディベロップメント(運動発達)
どの段階でも、筋肉や関節の連動は、身体の各部位ではなく「脳」で覚えます。
最終的には特別に意識をしない状況で、自転車に乗れるようになり、数年乗っていなくても自転車の乗り方を忘れるということはありません。
これはモーターコントロール、モーターラーニングという2つの段階を経て、脳が自転車に乗る時の身体の使い方を覚えている状態で、「モーターディベロップメント(運動発達)」の段階です。
私達が日常生活や運動・トレーニングの場面で行う身体の動きは、脳というコンピューターが動作を覚えて、コントロールしているというイメージです。
まずは「動きを覚える」ことが重要
運動歴・トレーニング歴が少ない人は、多い人に比べて身体の動きが非効率な場合が多いです。
ここでいう「非効率」な身体の動きとは、複数の筋肉が連動しない状態で、1つの筋肉だけを過剰に働かせていたり、1つの関節だけに大きな負荷が掛かってしまう動きになります。
非効率な身体の動きを改善しないまま、運動やトレーニングを始めていくと怪我につながります。
普段あまり身体を動かしていない方が「マラソン大会の抽選に当たったのでランニングを始めたが、膝を怪我してしまった」という話をよく聞きます。
これは、その人の走り方が非効率な身体の動きになっていて、練習を重ねていく中で、下半身の特定の筋肉や、膝の関節に負担がかかってしまい怪我につながっているケースが多いです。
マラソンに向けて「走る」という練習は絶対に必要ですが、それと並行して膝を痛めない身体の動かし方(ランニングフォーム)を獲得するためのトレーニングを行なっていく必要があります。
動きを覚えるのに必要な期間は?
1つの動作を覚える為に必要な期間は明確な基準はありません。
覚える動作が簡単んであればある程、その期間は短くなり、逆に複雑であれば、必要な期間は増えていきます。
しかし、運動歴・トレーニング歴が少ない人、多い人で必要な期間を比較すると、運動歴・トレーニング歴が少ない人の方が、動作を覚える為に必要な期間は長くなる傾向にあります。
運動歴・トレーニング歴が多い人は身体のコントロールが上手い
その理由として考えられるのは、運動歴・トレーニング歴が多い人は身体のコントロールが上手いということです。
小さい頃から習い事や部活動でスポーツをしてきた人は、そのスポーツの動作の中で、様々な動きを練習してきています。
例えば、野球をしてきた人は「遠くにボールを投げる動作」、サッカーをしてきた人は「強いキックを蹴る為の動作」です。
そのため、新しく行う動作であっても、今までの経験を元に、何回か練習をすれば動作を覚えていきます。
運動歴・トレーニング歴が少ない方は、過去に行なってきた身体の動きの経験が少ないので、トレーニング初期は効率良い身体の動かし方を覚えるために、繰り返し同じ動作をを反復していく期間が必要になります。
運動歴・トレーニング歴が多い人は有利?
前述した様に、新しいトレーニング動作であっても、運動歴・トレーニング歴が多い人の方が短期間で覚えることができるので有利ではあります。
しかし、過去に行なってきたスポーツ、トレーニングで身についた身体の動きが、マイナスな影響を与える場合もあります。
上の2つの写真はどちらもスクワットというエクササイズを行なっています。
- 左の写真のスクワットでは、お腹、お尻、もも前、背筋と複数の筋肉を同時に連動させて身体を支えられています。
- 一方、右の写真では、お尻、もも前(膝近く)、ふくらはぎといった下半身の筋肉を中心に働かせて、身体を支えています。
特定の筋肉、関節に負担をかけない効率よい身体の動かし方ができているのは、左の写真のスクワットです。
同じスクワットというエクササイズを行なっていても、過去に行なってきたスポーツやトレーニングフォームで、動作は大きく異なります。
脳は繰り返し反復して行なってきた身体の動かし方を覚えていくので、長期間行なってきた身体の動かし方を、新しい動かし方に変化させていくのには時間がかかります。
野球選手のスイング改造の例
この状況をアスリートに例えるとイメージしやすいです。
例えば、シーズン中に成績不振だった野球選手が、オフにスイング改造を行います。
小さい頃から身体にしみついたスイング動作(身体の使い方)を変える為には、数ヶ月間集中して新しいスイングを練習する必要があります。
目的にもよりますが、運度歴・トレーニング歴が長い人でも、トレーニングの動きを覚える(変える)ための期間が長くなる場合もあります。
まとめ
運動歴・トレーニング歴が少ない人は、トレーニングを開始したばかりのときは、効率良い身体の動きを覚えるために、頻度多めにトレーニングを行うことがおすすめです。
動作を覚える時期は、自主トレよりパーソナルトレーニングの回数を増やすことで、間違った動き(非効率な身体の動き)を覚えてしまうことを防げるので、最終的に目標達成までの期間が短縮されます。
普段のパーソナルトレーニングでは、1番最初のカウンセリングで運動歴・トレーニング歴を確認させていただいて、それを元にトレーニング初期(1~2ヶ月)の頻度を提案することも多いです。
効率良く身体の動きを覚える期間なので、毎回のトレーニングの期間が3~4日以上は空かない頻度(週2回が目安)でパーソナルトレーニングを提案しています。
もちろん「目標」「ライフスタイル」といった他の要素も考えながらの提案になるので、1人1人最終的な頻度は異なっていきます。
そして、半永久的にずっと同じではなく、その時々のライフスタイルや身体の状態によっても変化してきます。
大切なのは1つの要素だけで決めないこと。トレーニング頻度やボディメイクについてお悩みの方がいましたら、ぜひご連絡下さい。
一緒にあなたの今の状況にあったトレーニング頻度を探していきましょう!