パーソナルトレーニングジム「Sharez高山店」トレーナーの桂川晃尚です。
岐阜県高山市立松倉中学校男子バレーボール部のコーチである「大野淳平」氏から、「バレーボールに必要なトレーニングやストレッチを教えてほしい」とお話を受け、「バレーボールに必要な瞬発力向上プログラム」と「バレーボールで使われる筋肉にアプローチしたストレッチ」をお伝えするセミナーを開催しました。
セミナー会場は「高山市立松倉中学校」です。ちなみに、松倉中学校はSharez代表岡崎の出身校です。
目次
バレーボール瞬発力向上セミナー開催の経緯
松倉中学校男子バレーボール部コーチの大野さんは、私の2学年上の先輩にあたり、社会人バレーボールやソフトバレーボールの知人を通して繋がりました。
普段の練習メニューは、顧問の先生やコーチ陣が考えており、大野コーチも「ネット検索やYoutubeに上がっている動画」を参考にして、練習メニューに取り入れているとのことでした。
しかし、ネット上には多くの情報が飛び交っているため、「調べれば調べるほど、何を練習に取り入れれば良いか分からない」と悩んでいました。
その後、大野コーチから相談を受け、「バレーボールに必要な能力と練習メニューやストレッチ方法」をお伝えする機会をいただきました。
中学生向けバレーボール瞬発力向上セミナーの内容
今回のセミナーの内容はこちらです。
- バレーボールに必要な動きの説明
- Tテスト評価法の説明と実践
- Tテストの動きを分解して、それぞれを練習
- Tテストの再測定
今回のセミナーは、11名(中学1年生7名、中学2年生4名)の選手に参加いただきました。
参加者全員に資料を配布し、セミナー中に写真を撮ったり、メモを取っていただき、その後の日々の練習で活かせる様にしました。
セミナーの各内容の詳細について、以下で紹介していきます。
①バレーボールに必要な動きの説明
バレーボールは、「レシーブやトス、スパイク」など、どの動作でも瞬発力が求められます。
この瞬発力は、大きく3つの力に分解することができます。
- 動体視力(動いているものの情報を正確に判断する力)
- 反射速度(目や頭でとらえた情報を瞬時に伝達する力)
- 移動速度(落下地点までの移動やその姿勢を維持する力)
今回のセミナーでは、3つ目の「移動速度」に焦点を絞って、練習内容を構成しています。
②Tテスト評価法の説明と実践
移動速度の練習を始める前に、現状の各選手の移動速度を評価しました。
評価方法として、「Tテスト評価法」を実践しました。
Tテスト評価法とは?
※参考記録としては、プロスポーツ選手の速い方で「8秒台」です。
バレーボールの動きとTテスト評価法の関係
バレーボールでは、サーブレシーブやスパイクレシーブにおける1歩目の移動速度や、フェイントやワンタッチボールに対する反応速度と方向転換スキルが必要となります。
よって、Tテストのタイムが速い方は、前後左右の方向転換やスピード、機敏性の能力が高く、バレーボールにおいても、素早くボールの下に入ることができます。
Tテスト評価法の実施
今回は、T字型を2面作成し、2チームに分かれてタイムを測定しました。
1人2回測定し、タイムの良い方を記録としています。
結果としては11秒台が2名で、Tテストに必要な力や動きを習得することで、よりタイムが伸びるなと感じました。
Tテスト実施後は、少しでもタイムが速くなり、競技レベルがアップするための方法として、Tテストの動きを分解し、それぞれ動きの練習方法でお伝えしていきました。
③Tテストの動きを分解して、それぞれを練習
Tテストの動きを分解すると、以下の5つの動きになります。
- スタート
- ダッシュ
- 減速
- 方向転換
- バック走
瞬発力や機敏性を鍛え、加速や減速、方向転換のスキルを習得することで、Tテストのタイムが向上します。
これをバレーボールに置き換えると、サーブレシーブやフェイントカバーの落下地点に素早く入る能力などを高めることに繋がります。
そこで、上記の5つの動きを向上するために、以下の6つの練習方法をお伝えし、実際に練習していきました。
- ウォールドリル
- バーティカルステップ
- 減速からの方向転換
- サイドステップ
- サイドステップからの方向転換
- バックバウンディング
ウォールドリルの説明と実践
ウォールドリルとは、壁を使い、「脚の入れ替えや地面を蹴る力、姿勢を維持する力」を習得するトレーニング法です。
主に、瞬発的な力の発揮やスプリントなどにおける「加速局面の動作習得」に役立ちます。
やり方としては、壁に手をつき、前傾姿勢から、脚を素早く入れ替えるステップを行いました。
実際にやってみると、以下の課題が見つかりました。
- 足元が気になり目線が落ちてしまう。
- 斜め姿勢が維持できず、肘が曲がってしまう。
- 脚を入れ替える際に、姿勢維持ができず、頭の位置が上下してしまう。
今後は、脚の入れ替えを行う前に「壁を強く押す感覚を養うこと」や「斜め姿勢を安定させる体幹力の強化」も追加する必要があると感じました。
バーティカルステップの説明と実践
バーティカルステップとは、「縦の前後に動くステップ」のことを意味します。
走る動きから、素早く減速したいときには、速く細かい足の動きが必要となります。その力をつけるために、今回はラダーを使用して、2イン2アウト(左右)の動きを取り入れました。
最初は、ラダーのマス目を意識し過ぎてスピードが落ちていましたが、慣れてくると、ほとんどの選手が細かく早い動きができていました。
秒数内に何回できたかを競い合うことで、闘争心やモチベーションが上がるので、良い練習方法だと思いました。
減速からの方向転換の説明と実践
Tテストでは、フロント走の後にサイドステップへの切り替えがあります。
その切り替えをスムーズに行うには、「減速する能力」と「横への方向転換する能力」が必要となります。
バレーボールでは、セットアップ時やブロックカバーなどの、予測不能なボールに対して素早く反応して、ボールの落下地点に入ることに繋がります。
今回は、Tテストのコースを使って、なるべく低い姿勢から減速し、進行方向に重心を移動させて切り替える練習(左右)を取り入れました。
この練習では、以下の課題がありました。
- 切り替え時に、進行方向と逆に重心が流れてしまう。
- 右利きの場合、右足での踏み切りが苦手。
Tテストは、最初の方向転換で右に移動しますが、バレーボールでは左右の切り替え能力が必要になるため、苦手な方の数を増やしたり強化していくメニューが必要であると感じました。
サイドステップの説明と実践
横に進む動き(サイドステップ)では、進行方向と逆の足で、地面を強く蹴って移動する力が必要となります。
バレーボールでは、ブロックでの横移動などに繋がる能力となります。
今回は、「サイドステップで体育館半面(20m)を何歩でいけるか」を取り入れて、地面を強く蹴る感覚を養っていきました。
利き足側での踏み込みが弱くなり、移動距離が短くなっている傾向があったので、別メニューとして、片足ジャンプや重心移動の練習を行い、より踏み込む力を強化する必要があると感じました。
サイドステップからの方向転換の説明と実践
Tテストでは、サイドステップからバック走への切り替えがあります。
バック走に切り替えるためには、後ろへ重心を移動させる能力が必要となります。
こちらも、Tテストのコースを利用して、なるべく低い体勢から、後ろ方向へ重心を移動させる練習(左右)を取り入れました。
実際にやってみると、横から後ろ方向への重心移動がスムーズにできず、体が流れてしまう選手が数名いました。
まずはスピードを落としたところからで良いので、動きや重心移動を覚えてもらうことが重要だと感じました。
バックバウンディングの説明と実践
Tテストでは、最後に10mのバック走があります。
後ろへ重心を移動させ、地面を蹴る力が必要となります。その力をつけるため、バックバウンディングを取り入れました。
バックバウンディングは、「片足で地面を蹴って、後ろに大きくステップする練習法」です。
この練習では、腕振りと地面を蹴るタイミング(リズム)を合わせることや、前屈みにならないように後ろに重心を保つことがポイントになります。
体育館半面(20m)を何歩でいけるかを実施し、バック走に必要な能力を高めていきました。
実際にやってみると、以下の課題が見つかりました。
- 地面を蹴る足と反対の足が股関節伸展できてない。
- 重心が前にいってしまう。
- 手の振りと足の踏み込みのタイミングが合っていない。
両足ジャンプでのシザーズや手と足のタイミングの取り方などの練習を組み入れることで、より能力が向上していくと感じました。
④Tテストの再測定
Tテストに必要な能力の説明と実践を終えて、再度Tテストを実施しました。
8名の選手が1回目よりもタイムが良くなり、速い方で「1.81秒」タイムが速くなりました。
今回実施してきた内容を継続することにより、Tテストのタイムが早くなるだけでなく、バレーボールに必要なダッシュ力や方向転換等のスキルも向上し、瞬発力強化にも繋がっていきます。
実際に今回の内容を実践いただき、数ヶ月後に「Tテストのタイムがどれくらい向上したか」を確認したいと考えています。
これらの成果やビフォーアフターのデータは、別途記事にしてご紹介したいと思います!
バレーボールで使われる筋肉にアプローチしたストレッチ
バレーボールで使われる筋肉にアプローチしたストレッチとして、今回は「WGS(ワールド・グレイテスト・ストレッチ)」のやり方をお伝えしました。
WGS(ワールド・グレイテスト・ストレッチ)は、以下の効果が期待できます。
- 股関節、膝関節、足関節の可動域向上
- 胸椎回旋動作の可動域向上
- 肩甲骨周辺の可動域向上
- 体幹部の安定性向上
バレーボールの動作に置き換えると、スパイクのジャンプ時の踏み切りや腕のスイングモーションで、①と③の要素が必要となります。
また、スパイク時には、空中でのバランスや打ちたい方向に身体をひねる動作が入るため、②や④の要素が必要となります。
WGS(ワールド・グレイテスト・ストレッチ)には、バレーボールの動きに必要な要素が含まれているため、正しいフォームで実施することで、競技のパフォーマンスアップに繋がります。
参考 世界で一番“偉大”なストレッチ。WGSを知ってる?Tarzan Web(ターザンウェブ)まとめ
大野コーチとの会話の中で、「コロナの影響下の限られた時間と今ある環境で、チームの課題をクリアするために、どんなことをしたら良いかわからない」といったチームは、他にも多いのではという気づきがありました。
Sharezでも、コロナの影響で3年ぶりにセミナーとなってしまいましたが、このような貴重な機会をご用意いただき、地元へ貢献が実現できたことに喜びとやりがいを感じました。
今回のセミナー開催にあたり、ご協力いただきました皆様に、この場をお借りし感謝申し上げます。
Sharezでは、今後も積極的にスポーツ指導分野にも力を入れていきたいと考えております。
エリアや競技を問わず、スポーツに携わる多くの方に、専門的な技術や知識を提供し、よりスポーツを楽しんでいただきたいと思っております。
「部活動やスポーツチームでセミナーを実施して欲しい」というご要望がございましたら、「お問い合わせフォーム」よりお気軽にお申し付けください!